今週は会員Sさんの推薦作を解説します 山川健一

──なぜ小説を書くのか
なぜ小説を書かずにいられないのか
それを作品全てで訴えているのがSさんの短編小説である──

 

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2024年10月11日

特別公開:今週は会員Sさんの推薦作を解説します 山川健一

【文学の秘密】

会員Sさんの「(作品名非公開、1作目)」に続く2作目、「(作品名非公開、2作目)」を推薦作として掲載したところだ。

《作品はオンラインサロン内でのみ閲覧できます》

 一昨日、大学時代の友人達と品川で飲んで帰宅。途中JRの駅のホームでiPhoneが鳴った。

Sさんからの電話で、2作目を書き上げたということだった。送ったら読んでくれるかと言うので、すぐに送って欲しいと答えた。

しかし「(作品名非公開、1作目)」から数日しか経っていない。もう2作目ができたのかと僕は少し驚いた。

その夜は酔っ払っていたので、翌日の午後読ませていただいた。いい短編だなと思い、この2本の短編小説には何か秘密があるなと僕は感じた。

このところ、素晴らしい処女作を書いたロックキッズ達が苦戦しており、僕自身も自分の原稿で苦労している。KさんやJBさんや、他にも何人かの会員の方々が、思うように作品を書けずに悪戦苦闘している。

そんな僕ら全員への回答が、Sさんの生まれて初めてた書いた短編と2本目に書いた短編にはあるのだと思う。

それは何か?

ごく普通に平穏に生きてきて、しかし癒しがたい傷がある。誰でもそうだろう。

僕もそうだし、ロックキッズもそうだし、和歌山の占い師もそうだし、Sさんもそんな傷ついた大人の1人である。

2本の小説を読むと、彼女には早逝した弟さんがいたのだということがわかる。天使のような子供のまま彼は天に召された。

それが深い喪失感となって、今も彼女の心の奥深いところにあるのだろうと思う。

Sさんは物語化計画に入会し「私は小説なんて書きません。ただ勉強していたいだけです」と言っていた。そんな彼女が、僕に背中を押されることによって最初の短編を書いたのである。

もちろんプロの作家が書くような巧みさはまだないし、タイトルも説明的だったので、考え直してもらった。彼女は僕の『物語を作る魔法のルール』を精読し、毎週の講義テキストにも目を通し、おまけに早稲田大学のロック講座にまで参加している。

だから「冒頭には欠落がないとダメなのだ」とか「隠された秘密の開示が必要だ」とか、物語論の基本的なところはよく理解している。

それでも実際に書くと書き出し部分が説明的だったり、結末が解説的になってしまったりしていた。そこで冒頭と結末の推敲を指示した。

しかし、僕のアドバイスはその程度で、2本の作品そのものは紛れもなく、彼女の心の深い部分から生まれたものである。

ここには「小説を書く」という行為の秘密が隠されている。

なぜ僕らは小説を書くのだろうか。

傷ついた「私」を癒すためにこそ書くのではないだろうか。作品を書くことによって、書き手は癒される。そして「(作品名非公開、1作目)」と「(作品名非公開、2作目)」を読むことによって、読者である僕ら自身も癒される。

文学とは、あるいは芸術とは、そんな基本的な原理に支えられているのではなかったか────続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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