夏休み特別企画/星空を見上げながら考える 02 会員の方々の児童文学を紹介します 山川健一
──大人になってからも、子供たちの繊細な心の動きを描ける作家たちを僕は羨ましく思う──
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2024年8月2日
特別公開:夏休み特別企画/星空を見上げながら考える 02 会員の方々の児童文学を紹介します 山川健一
今週は、宇宙の話はちょっと休憩で、物語化計画の会員の皆さんの、宇宙のようにファンタジックな新刊小説3冊を紹介したいと思う。まだ刊行されたばかりの本なのだが、早い方がいいと思うので。
【東北ふしぎ物語──千秋つむぎ】
みちのく童話会(著)/ふるやま たく(イラスト)『東北ふしぎ物語 東北6つの物語』(国土社)
この本はみちのく童話会の編・著、ふるやまたく氏とおしのともこ氏が挿画を担当するアンソロジーである。
複数の短編小説で東北地方の自然や歴史を描いている。
三陸海岸のヤマセ、横手のかまくら、裏磐梯の五色沼、山形のケサランパサラン、青森の三内丸山遺跡、伊豆沼・内沼のガン。
東北6県の自然や歴史の不思議をテーマとする6つの物語からなる1冊で、この中のケサランパサランを物語化計画の僕の教え子である千秋つむぎが書いている。
僕は山形で8年間教鞭をとったが、学生たちはこの自然を書けばいいのにと何度も思ったものだった。
研究室の窓の向こうに見える、紫に煙る出羽三山、カエルが鳴く水田、妖しく光る蛍、星々が燦然と輝く広い夜空。大学の背後に聳えるのは蔵王である。
千秋つむぎが書いたのは「ケサランパサランの冬」という短編だ。アンソロジーに収録された1作だが、彼女の商業的なデビュー作でもある。
──(略)──
【森のちいさな三姉妹 はじめてのおたんじようび!──楠章子】
楠章子(著)/井田千秋(イラスト)『森のちいさな三姉妹 はじめてのおたんじょう日!』(Gakken)
楠章子さんの『森のちいさな三姉妹 はじめてのおたんじょう日!』は、「森のちいさな三姉妹」シリーズの3作目である。
最初が『へんくつさんのお茶会 おいしい山のパン屋さんの物語』、次が『森のちいさな三姉妹 森ネコさんのおかしをどうぞ』、そして最新作が『森のちいさな三姉妹 はじめてのおたんじょう日!』である。
挿画は井田千秋さん。
この誕生日をめぐる本を、僕はなんと自分の誕生日に、楠章子さんからプレゼントして頂いたのである。贅沢な話だ。
《もりもり森にすむ小人の女の子、ココは、お姉ちゃんふたりがいる三姉妹の末っ子。
たまにけんかしながらも、姉妹で仲良く暮らしています。
そんなココは、パーティー屋さんを開くことに。
もりもり森の初めてのお誕生日会を考えますが、たくさんのハプニングが……。
無事にパーティーは開けるのでしょうか?》(Amazonの概要より)
少し前に楠章子さんの『スタート』(あかね書房)を紹介したことがある。この物語に僕は衝撃を受けたのだった。
──この小説は児童文学の金字塔であるばかりでなく、文学というものの価値ある達成を読者である僕らに鮮やかに告知している──と、僕は書いた。一方『森のちいさな三姉妹』は温かな物語で、『スタート』のような物騒な部分はないのだが、そこは楠章子、こんな箇所がある。
──(略)──
【となりの魔女フレンズ 雨あがりにきらめく笑顔の魔法──宮下恵茉】
宮下恵茉(著)/子兎(イラスト)『となりの魔女フレンズ 雨あがりにきらめく笑顔の魔法』(Gakken)
本書は宮下恵茉さんの「となりの魔女フレンズ」シリーズの2巻だ。安定の宮下ブランドである。
宮下さんには『たまごの魔法屋トワ』シリーズ、『となりの魔女フレンズ』の前のシリーズである『魔女フレンズ』など魔法を素材にしたものが多い。その魔法の世界に若い読者は引き込まれていく。
少し前に彼女の『9時半までのシンデレラ』を紹介したことがある。この作品について僕はこう書いた。
──(略)──
【子供の気持ち】
今回紹介した3つの物語は、偶然ながら、どれも主人公たちが小中学生である。小人の女の子のココも小学生ぐらいの年齢だろう。
大人になってからも、子供たちの繊細な心の動きを描ける作家たちを僕は羨ましく思う。
思うに──続きはオンラインサロンでご覧ください)
山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』